非上場株式の売却では、会社の承認が必要となるケースが多く、手続きを正しく理解しておくことが重要です。
この記事では、譲渡制限の確認から承認請求、名義書換、税金計算、そして承認が拒否された場合の対応まで、非上場株式を売却する際の一連の流れをわかりやすく整理しています。
非上場株式を売却するに先立ち、買い手との交渉や株価の算定といった重要なプロセスを踏む必要がありますが、これらのプロセスは会社の正確な数値データが揃っていることが大前提となり進められます。円滑な売却に向けた出発点として、まずは以下の必要書類を漏れなく取り揃えましょう。
株式の譲渡制限の有無や、譲渡の承認機関がどこ(取締役会あるいは株主総会)なのかを確認するために必要です。売却を行う上での前提条件が明記されています。
株価算定の土台となる極めて重要なデータです。専門家が会社の収益力や資産状況を正しく読み解くための基礎資料として用いられます。
ご自身の正確な持株数だけでなく、他にどのような株主が在籍しているかを確認するために取り寄せます。交渉相手や交渉の前提となる株主構成を把握する上で欠かせません。
少数株主が経営陣と対立しているような場面では、会社側が決算書などの開示を拒むというトラブルが珍しくありません。そのような状況に直面した場合は、会社法上の権利である「閲覧謄写請求」を行使し、法的に必要な書類の開示を求めることができます。
ただし、実際の請求手続きは法的な専門知識を要し複雑な側面があるため、自力で進めるのではなく、早い段階で企業法務に詳しい弁護士へ相談することが大切です。
非上場株式には上場株式のような一律の市場価格が存在しません。そのため、売却を行う際には「評価方式」を用いて株価を算出する必要があります。
評価方式には純資産価額方式や類似業種比準方式などがありますが、どの方式を採用すべきかは、その会社の規模や売却する株主の属性によって異なります。
非上場株式は証券取引所に上場していないため、株式を売却したくても自力で買い手を見つけることは容易でありません。そのため取引相手は、基本的に既存株主や会社関係者、あるいはM&A仲介会社が紹介する第三者などに限られることとなります。
譲渡制限株式を売却する際は、会社法の定めにより会社へ「この相手に株式を譲渡したい」という正式な請求、いわゆる譲渡承認請求を提出する必要があります。この手続きは、原則として買い手と連名で行うのが通例ですが、状況に応じて単独での請求が認められるケースもあります。
請求を受けた会社側は、取締役会や株主総会といった承認機関にて審議を行い、一定期間内に譲渡の可否を通知しなければなりません。
もし会社が譲渡を不承認とした場合、売り手は会社自身や会社が指定する買取人に対して株式の買い取りを求める「買取請求権」を行使することです。会社側はこの請求を受けると、自ら買い取るか指定買取人を立てるかのいずれかの対応を取る義務を負います。
会社から譲渡承認が下りた場合、あるいは指定買取人と価格の合意が成立した場合、売り手と買い手との間で正式に「株式譲渡契約書」を締結します。その後、実際に代金の着金を確認してから、会社に対して株主名簿の名義書換を請求するという流れになります。
名義書換が完了して初めて、買い手は法的に株主としての権利を取得します。
上場株式と異なり、非上場株式の売却益については証券会社による源泉徴収が行われません。そのため、売却した翌年の2月16日から3月15日までの間に自分で確定申告を行って納税する義務があります。申告を怠るとペナルティが課されることもあるため、売却が完了した時点から余裕を持って準備を進めることが重要です。
外部の個人や買取業者へ売却した場合、売却益(譲渡所得)に対して一律20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)の税率が適用されます。税務上は、給与所得などとは切り離して計算する「申告分離課税」の対象となるため、他の所得の大小に関わらず税率は変わりません。
株式を発行会社に買い取ってもらう「自社株買い」の場合、受け取った金額のうち、会社の資本金等の額を超える部分は「配当」とみなされます。この「みなし配当」は、給与所得などと合算して税額を算出する「総合課税」の対象となるため、所得額によっては最大税率が約55%に達することもあります。
高い税率を回避する一つの方法としては、第三者への売却も含めた複数の選択肢を比較検討しておくことが重要。専門性の高いスキームとなるため、税理士等への相談は必須になります。
親族や知人などの特定の相手との間で、税務上の時価から著しくかけ離れた価格で取引を行うと、「みなし贈与」として贈与税の課税リスクが生じます(最高税率55%)。市場価格よりも低すぎる価格での取引はもちろん、逆に高すぎる価格での取引もみなし贈与の対象です。
少数株主が単独で動いても、経営陣が情報を開示せず、かつ買取にも応じてくれないケースは珍しくありません。しかし、本記事で解説した会社法上の権利(閲覧謄写請求・買取請求権)を正しく行使し、税務上のリスクを把握したうえで交渉に臨めば、経営陣と対等以上の立場で話し合いを進めることも可能になります。
非上場株式の売却において、相談すべき専門家は現在のフェーズや目的に応じて異なります。
会社が交渉に応じない場合や法的手続きを視野に入れる必要があるときは、弁護士へ相談するのが適切です。一方、適正な株価の算定や「みなし配当」を回避するスキームを検討したい場合は、税理士が専門知識を活かして対応します。また、経営権ごと100%の株式を第三者に売却したい場合は、幅広いネットワークを持つM&A仲介会社に依頼するのが現実的です。
自身の状況を整理し、目的に合った専門家へ相談するようにしましょう。
非上場株式の売却では、書類収集から株価算定、譲渡承認請求、売買契約、さらには翌年の確定申告まで、法律と税務が複雑に絡み合うプロセスを避けられません。知識が不十分なまま独断で進めてしまうと、思わぬ損失やトラブルを招く恐れがあるので注意しましょう。
まずは「株式の適正価格を知りたいのか」「会社との交渉を円滑に進めたいのか」等々、ご自身の目的を整理することが前提です。そのうえで信頼できる専門家の無料相談を活用し、非上場株式の売却に向けた第一歩を踏み出してみましょう。
非上場株式の取引は、上場株と違い法的手続きや税務対応が複雑なため、専門家への相談が不可欠です。
ここでは、弁護士・税理士・M&A仲介会社の中から、目的別に信頼できる3つの相談先を厳選してご紹介します。
一部の株式買取業者は、無登録での営業や詐欺的な手法、非弁行為(弁護士でない者が弁護士の業務を行うこと)など違法性が問題視されており、大阪高等裁判所2024年7月12日判決では株式買取業者の行為が非弁行為にあたると判断された判例もあります。また、高額買取をうたって実際は買い叩くケースもあるため、一定のリスクがあることを理解したうえで相談することが重要です。
株式買取に詳しく、M&Aやファイナンス理論の知見があることが重要です。対応実績と交渉力を事前に確認しましょう。
資産税・自社株評価に強い税理士法人か確認。M&Aや法務に対応できる他士業と連携しているかどうかも大切です。
業種や規模に合った買い手ネットワークを持っているかを見極めましょう。成約するまでのスピードもポイントです。