M&Aや事業承継において、経営の意思決定を迅速にするために行われる「スクイーズアウト」。有効な手法の一つですが、少数株主の権利を強制的に買い取る性質上、トラブルに発展するリスクも潜んでいます。
本記事では想定されるリスクやデメリット、それらを未然に防ぐための具体的な対策を解説します。
大株主が少数株主から強制的に株式を買い取り、会社を100%子会社化(完全子会社化)する手法です。経営の意思決定を迅速化することや、株主総会の運営など株主管理にかかるコストを削減することを目的として行われます。
事業承継の際、経営者以外の親族や従業員に分散した株式を集約するためにも活用されます。
スクイーズアウトには、状況や目的に応じて主に以下の4つの手法が用いられます。
それぞれの手法により、必要となる議決権の割合や実行までの手続き、期間が異なるため、自社の資本状況に合わせた適切な手法の選定が求められます。
スクイーズアウトは強制力を持つ手続きであるため、慎重に進めないと以下のようなリスクやデメリットが起こり得ます。
発生しやすいトラブルとして、買取価格に対する少数株主からの反発が挙げられます。価格が不当に低いと判断された場合、裁判所に対する「株式買取価格の決定の申立て」や、「株式取得の無効の訴え」、「手続の差止請求」などを起こされるリスクがあります。
スクイーズアウトには、会社法で定められた厳格な手続きが存在します。事前の通知漏れや株主総会の招集手続きの不備など、法令違反や手続き上のミスがあると判断された場合、手続きの差し止めや無効化を求められる事態になりかねません。
少数株主との交渉が難航したり、訴訟に発展したりした場合、予定していたM&Aや組織再編のスケジュールが遅延してしまいます。
裁判対応や長期化する交渉に伴い、弁護士などの専門家への報酬や諸費用が増加する可能性もあります。
選択したスクイーズアウトの手法によって、税務上の取り扱い(適格要件の判定や「みなし配当」の有無など)が異なります。
事前の確認が不十分なまま進めると、想定外の課税が発生するなど、税務トラブルを招く恐れがあります。
訴訟リスクを抑えるためには、第三者機関に株式価値の算定を依頼し、誰もが納得しやすい公正な買取価格を設定することが重要です。
特別委員会を設置して手続きの客観性を担保するなど、透明性の高いプロセスを踏むことが推奨されます。
強制的な手続きに入る前に、少数株主に対して誠実にコミュニケーションを取り、任意交渉による買い取りを目指すことが望ましいです。
スクイーズアウトの目的や価格の根拠を丁寧に説明し、理解を得る努力がトラブル回避につながります。
スクイーズアウトの実行には、法務・税務の専門知識を要します。自社だけで進めようとせず、M&Aや会社法に精通した弁護士、税理士などの専門家に早い段階で相談し、法的に安全で税務リスクを抑えた手法を構築することがポイントです。
スクイーズアウトは、少数株主を整理して経営を効率化する手段ですが、価格への不満による訴訟や手続きのミス、税務トラブルといったリスクと隣り合わせです。
トラブルを防ぐためには、公正な価格算定、少数株主への誠実な対応、そして専門家のサポートを得ることが大切です。リスクを正しく把握し、専門家と連携しながら、円滑な手続きを進めましょう。
非上場株式の取引は、上場株と違い法的手続きや税務対応が複雑なため、専門家への相談が不可欠です。
ここでは、弁護士・税理士・M&A仲介会社の中から、目的別に信頼できる3つの相談先を厳選してご紹介します。
一部の株式買取業者は、無登録での営業や詐欺的な手法、非弁行為(弁護士でない者が弁護士の業務を行うこと)など違法性が問題視されており、大阪高等裁判所2024年7月12日判決では株式買取業者の行為が非弁行為にあたると判断された判例もあります。また、高額買取をうたって実際は買い叩くケースもあるため、一定のリスクがあることを理解したうえで相談することが重要です。
株式買取に詳しく、M&Aやファイナンス理論の知見があることが重要です。対応実績と交渉力を事前に確認しましょう。
資産税・自社株評価に強い税理士法人か確認。M&Aや法務に対応できる他士業と連携しているかどうかも大切です。
業種や規模に合った買い手ネットワークを持っているかを見極めましょう。成約するまでのスピードもポイントです。