非上場株式の売却では、提示された買取価格が「相場よりも極端に安い」と感じるケースが少なくありません。市場が存在しないため、価格の妥当性を判断する基準が曖昧になりやすく、会社側と株主側の認識が食い違うことが多いのです。この記事では、そうした価格トラブルが起きやすい背景と、適正な価値を見極めるための代表的な評価方法を解説します。
非上場株式の売却では、買い手と売り手の間で価格の認識に大きな差が生じることがあります。上場株のように日々の市場取引で価格が形成されないため、妥当な金額を判断する基準が曖昧になりやすいのです。ここでは、こうした「価格の食い違い」がなぜ起きるのか、その主な理由を整理します。
非上場株式には上場株のような「市場価格」が存在しないため、売り手と買い手の交渉によって価格を決めるしかありません。取引の参考となる相場情報が乏しく、双方の主張に大きな開きが生じやすいのが実情です。その結果、価格が適正かどうか判断できず、トラブルに発展するケースもあります。
株主はできるだけ高く売りたい一方で、会社はできるだけ安く買い取りたいと考えるため、根本的に利害が一致しません。買い手である会社側は、自社の業績や資産価値を控えめに見積もることで買取価格を低く抑えようとする傾向があります。こうした思惑のズレが、価格交渉を長引かせる原因となります。
買取価格をめぐるトラブルを防ぐには、客観的な根拠に基づいて株式の価値を把握することが重要です。非上場株式の場合、市場価格が存在しないため、企業の資産や収益などをもとに評価額を算出します。ここでは、実務でよく使われる代表的な評価手法を紹介します。
事業内容が近い上場企業の株価・配当・利益水準を参考に、対象企業の株価を算出する方法です。市場での評価を基準にできるため、比較的客観性の高い手法とされています。ただし、規模や事業構造が類似する上場企業が見つからない場合には、適用が難しくなることもあります。
会社の総資産から負債を差し引いた「純資産額」を発行済株式数で割り、1株あたりの理論的な価値を算出する方法です。企業を清算した場合に残る財産価値を基準とすることから「解散価値」を示すともいわれ、財務内容を重視した評価手法として資産保有型の企業などで用いられます。
将来にわたって会社が生み出すと見込まれるキャッシュフローを、現在価値に割り引いて企業価値を算出する方法です。将来の利益創出力を評価に反映できるため、成長性の高い企業やM&A・ベンチャー投資の場面で広く活用されています。
主要な評価手法だけでは企業価値を正確に把握しきれない場合、補助的な手段として保有資産を時価で評価し直す時価純資産法や、過去の配当実績を基準とする配当還元法が用いられます。これらは単独で用いるよりも、他の手法と併せて参考値として活用されるケースが一般的です。
非上場株式の評価や売却を正確に進めるには、専門的な知識と客観的な視点が欠かせません。自力で算定を試みても、法的手続きや税務処理、評価根拠の妥当性などで行き詰まることが多いためです。ここでは、弁護士・税理士・第三者評価機関といった専門家をどのように活用できるのか、その役割を整理します。
法的根拠に基づいて価格交渉や再評価を求められる点が大きな強みです。弁護士は株主の代理人として、会社に対し買取価格の算定根拠の開示を求め、その妥当性を確認します。必要に応じて再評価の請求や株式買取請求などの法的手段を取ることもでき、交渉を有利に進めやすくなります。
数値に基づいて価格の妥当性を明確に示せる点が大きな利点です。税理士は、会社側の提示額が適正かどうかを決算書や資産・利益の内容から検証します。純資産法や類似業種比準法などの評価手法を用いて株価を算出し、その結果をもとに提示額の根拠や不当性を客観的に説明できます。
M&A仲介会社やコンサルタントに依頼することで、実務に即した相場観や戦略的なアドバイスを得られる点が利点です。企業売買の現場を熟知しており、「この価格帯なら妥当と判断されやすい」「この資料を提示すれば再評価に応じやすい」といった具体的な知見をもとにサポートを受けられます。
ただし、価格交渉や法的対応は弁護士・税理士の専門領域にあたるため、第三者評価機関の役割はあくまで助言や戦略設計にとどまります。実務では、弁護士や税理士と連携しながら進めるケースが一般的です。
非上場株式は市場での取引がないため、売り手と買い手の利害が対立しやすく、買取価格をめぐるトラブルに発展することがあります。提示された金額に「安すぎるのでは」と感じた場合は、まず弁護士への相談を検討しましょう。
弁護士は法的な観点から不利な条件がないかを確認しつつ、必要に応じて税理士や第三者評価機関と連携し、適正な株価算定や交渉方針の立案までサポートします。自分で複数の専門家を探す手間が省けるほか、状況に応じた適切な対応を取ることができます。
以下のページでは、非上場株式売却の状況・悩み別に相談できる事務所や会社を紹介しています。相談先選びの材料としてご活用ください。
非上場株式の取引は、上場株と違い法的手続きや税務対応が複雑なため、専門家への相談が不可欠です。
ここでは、弁護士・税理士・M&A仲介会社の中から、目的別に信頼できる3つの相談先を厳選してご紹介します。
一部の株式買取業者は、無登録での営業や詐欺的な手法、非弁行為(弁護士でない者が弁護士の業務を行うこと)など違法性が問題視されており、大阪高等裁判所2024年7月12日判決では株式買取業者の行為が非弁行為にあたると判断された判例もあります。また、高額買取をうたって実際は買い叩くケースもあるため、一定のリスクがあることを理解したうえで相談することが重要です。
株式買取に詳しく、M&Aやファイナンス理論の知見があることが重要です。対応実績と交渉力を事前に確認しましょう。
資産税・自社株評価に強い税理士法人か確認。M&Aや法務に対応できる他士業と連携しているかどうかも大切です。
業種や規模に合った買い手ネットワークを持っているかを見極めましょう。成約するまでのスピードもポイントです。