非上場株式の譲渡は会社の承認がなければ進められず、承認拒否をめぐって法的トラブルに発展します。早い段階で専門家へ相談することが重要です。
本記事では、株式譲渡の基本的な流れから承認拒否・無回答時の対応、裁判所を通じた手続きまで解説します。
非上場株式を譲渡したい株主が取引を行うには、まず会社の承認が必要です。会社は承認の可否を決定し、売主に結果を通知するのが基本的な流れ。
もし承認されない場合でも、株式発行会社(または株式発行会社が指定する第三者)が非上場株式を買い取る流れに移るのが一般的です。
株式譲渡を承認する機関は、会社の組織形態によって決まります。取締役会を設置している会社では「取締役会」が、それ以外の会社では「株主総会」が承認の判断を下すのが原則です。
ただし、会社のルールブックである「定款」で異なる定めをしている場合もあります。まずは譲渡先の会社(発行会社)の定款を確認し、承認を行う機関を把握することが大切です。
多くの非上場株式を発行する会社では、経営の安定性を守るため、「定款」に株式譲渡を制限する条項を設けています。具体的には以下のような一文が記載されているのが一般的です。
承認が拒否された場合でも、株主には「株式買取請求」という法的手段があります。会社法第140条第1項で定められた制度で、株式発行会社(または株式発行会社が指定する第三者)に対し、公正な価格で非上場株式を買い取るよう求めることが可能です。
株式買取請求権を行使できる期間は、株主が譲渡不承認の通知を受け取ってから20日以内。行使期間をすぎると権利自体が消滅するため、期限管理を徹底しましょう。
承認請求から2週間以内に会社から承認するか否かの通知がなかった場合、法律上は『承認されたもの(みなし承認)』とみなされます。
株主には手続きを進める権利がありますが、会社側が異議を唱える可能性もあります。実務上のトラブルを避けるためにも、早い段階から弁護士へ相談しておきましょう。実際に名義書換などを実行に移す前に、一度弁護士に相談し、状況を確認するのが賢明です。
非上場株式の譲渡不承認後、買取交渉が決裂した場合、株主は裁判所に対して2つの申立てを行うことができます。1つ目は、公正な価格決定を求める「株式売買価格決定の申立て」です。裁判所が決定した価格での買取が促されます。
2つ目は、会社の不当な拒否に対し承認を求める例外的な「譲渡承認の訴訟」です。裁判所が承認を命じた場合に限り、希望の相手に非上場株式を譲渡できます。
譲渡承認の申立てが行われた場合、 裁判所は会社の拒否理由が正当かを判断します。株主としては、譲渡先が会社に損害を与えないことを資料で説明できると有利です。譲渡先が競合他社で会社の利益を著しく害する場合など、実際にどのような不利益が生じるかが重要なポイントです。
単に「経営に口出しされたくない」といった主観的な理由のみでは正当性が認められにくく、譲渡を認める判断が下される可能性が高まります。

株式譲渡の承認が拒否された場合でも、それで株主の権利が消滅するわけではありません。
会社が株式譲渡の承認を拒んだときは、会社または指定買取人が株式を買い取る義務を負い、株式売買価格について協議がまとまらない場合には、「株式売買価格決定申立裁判」において株式売買価格を審議することとなります。
また、会社が期限内に株式譲渡承認を拒否しなかった場合や、会社に手続き違反があった場合には、法律上「承認があったもの」とみなされる「みなし承認」となり株式譲渡が承認される場合もあります。
実務では、株式譲渡承認拒否の理由の正当性や株式売買価格の算定方法をめぐって紛争化しやすい傾向があります。したがって、知見がある弁護士が関与することで、解決を図れます。
土屋 勝裕氏のプロフィール
弁護士法人M&A総合法律事務所の代表弁護士。1999年弁護士登録(東京弁護士会26775)、1999~2005年長島・大野・常松法律事務所、2006年弁護士法人キャスト糸賀、2010年上海市世民律師事務所、2011年大成律師事務所上海事務所、2012年法律事務所開設。
非上場株式の譲渡で承認を拒否されても、解決する方法はあります。株主は「株式買取請求」や「みなし承認」などの制度を活用でき、最終的には裁判所を通じて譲渡を認めてもらうことも可能です。大切なのは、状況に応じて適切な専門家に相談し、正しい手続きを踏むことです。
当メディアでは、会社とトラブルに発展している場合は「弁護士法人」、相続した非上場株式の評価や税金について知りたい場合は「税理士法人」、非上場株式を100%保有していて売却先が見つからない場合は「M&A仲介会社」といったように、状況に応じた相談先を紹介しています。相談先を選ぶ際の参考にご活用ください。
非上場株式の取引は、上場株と違い法的手続きや税務対応が複雑なため、専門家への相談が不可欠です。
ここでは、弁護士・税理士・M&A仲介会社の中から、目的別に信頼できる3つの相談先を厳選してご紹介します。
一部の株式買取業者は、無登録での営業や詐欺的な手法、非弁行為(弁護士でない者が弁護士の業務を行うこと)など違法性が問題視されており、大阪高等裁判所2024年7月12日判決では株式買取業者の行為が非弁行為にあたると判断された判例もあります。また、高額買取をうたって実際は買い叩くケースもあるため、一定のリスクがあることを理解したうえで相談することが重要です。
株式買取に詳しく、M&Aやファイナンス理論の知見があることが重要です。対応実績と交渉力を事前に確認しましょう。
資産税・自社株評価に強い税理士法人か確認。M&Aや法務に対応できる他士業と連携しているかどうかも大切です。
業種や規模に合った買い手ネットワークを持っているかを見極めましょう。成約するまでのスピードもポイントです。