非上場株式の売却や事業承継(M&A)を進めるうえで、大きな障害となるのが「名義株」の存在です。株式を売却しようとしたものの、名義株があることで買い手がつかず「売れない」と悩む経営者や実質的株主は少なくありません。
本記事では、名義株が売れない理由や放置するリスク、そして売却・解消に向けた具体的な対処法について詳しく解説します。トラブルを未然に防ぎ、適正な形での株式売却を目指すための参考にしてください。
名義株とは、実際に出資して株式を所有している「実質株主」と、株主名簿に記載されている「名義上の株主」が異なる状態の株式を指します。名義株が発生する主な原因は以下の通りです。
会社をM&Aで売却したり、株式を第三者に譲渡したりしようとする際、名義株が存在すると「売れない(買い手がつかない)」という事態に陥りやすくなります。その理由は、買い手側にとって「取引後に真の株主(だと主張する者)が現れ、権利主張や紛争が生じてディールが不安定化するリスク」があるためです。
名簿上の株主(名義人)が後から「この株は自分のものだ」「適正な価格で買い取れ」などと権利を主張し、交渉が難航するケースも起こり得ます。このような不確実性を抱えたままの株式は、買い手から敬遠されがちです。
前述の通り、名義株が整理されていない会社はM&Aの対象としてハイリスクと評価されやすくなります。買収監査(デューデリジェンス)の段階で名義株が発覚すると、M&Aの交渉が破談になったり、大幅な減額を要求されたりする原因となります。
名義人が亡くなった場合、名義人の相続人が「親から相続した正当な自分の株式だ」と主張してくる恐れがあります。長年放置していると、当時の経緯を知る関係者も減り、実質株主であることを証明するのが極めて困難になり、泥沼の争いに発展する可能性があります。
名義株であることを十分に立証できないまま、無償または著しく低い価格で名義書換(株主名簿の記載の是正)を行おうとすると、税務署から「株式の贈与があった」と認定され、多額の贈与税が課せられるおそれ(税務リスク)があります。
売れない原因となっている名義株を解消し、適正に売却するためには、一つひとつの問題を丁寧に取り除いていく必要があります。
名義人と連絡が取れ、協力を得られる場合は、双方が「これは名義株であり、実質的な所有者は〇〇である」と合意し、株主名簿の記載に関する同意書(確認書)を作成します。そのうえで、会社に対して株主名簿の書換請求を行い、名義を正しい状態に戻します。
名義人が「自分の株だ」と主張して協力を拒む場合や、不当な高額買取を要求してくる場合は、以下のような手段を検討することになります(いずれも会社法上の手続・株主保護の規定を踏まえた慎重な設計が必要です)。
名義人がどこにいるか分からない場合は、会社法上の「所在不明株主」に関する制度を利用できる可能性があります。一定期間(例:5年以上)通知等が到達せず、かつ一定期間配当を受領していない等の要件を満たす場合、公告・催告等の所定手続きを行ったうえで、裁判所の許可を得て株式を売却(または会社が買い取る)できる場合があります。
名義株の解消は、法的な手続きと税務上のリスク管理が複雑に絡み合うため、当事者同士だけで解決しようとすると新たなトラブルを生む危険性があります。「名義株のせいで株式が売れない」とお悩みの場合は、経験豊富な専門家への相談が不可欠です。
名義人との交渉、株式併合などの会社法を用いた手続、あるいは訴訟による解決を検討する場合は、M&Aや企業法務に強い弁護士事務所への相談がおすすめです。少数株主問題や非上場株式のトラブルに精通した弁護士であれば、実質株主の権利を守り、円滑な売却へと導くサポートが期待できます。
名義書換に伴う贈与税の発生を防ぎたい場合や、相続が絡む名義株の評価・整理が必要な場合は、自社株評価や資産税に強い税理士事務所への相談が推奨されます。正しい株価算定と税務署への適切な対応を依頼できます。
名義株を放置しても自然に解決することはありません。売却を成功させるための第一歩として、まずは信頼できる専門家へご自身の状況を相談してみてはいかがでしょうか。
非上場株式の取引は、上場株と違い法的手続きや税務対応が複雑なため、専門家への相談が不可欠です。
ここでは、弁護士・税理士・M&A仲介会社の中から、目的別に信頼できる3つの相談先を厳選してご紹介します。
一部の株式買取業者は、無登録での営業や詐欺的な手法、非弁行為(弁護士でない者が弁護士の業務を行うこと)など違法性が問題視されており、大阪高等裁判所2024年7月12日判決では株式買取業者の行為が非弁行為にあたると判断された判例もあります。また、高額買取をうたって実際は買い叩くケースもあるため、一定のリスクがあることを理解したうえで相談することが重要です。
株式買取に詳しく、M&Aやファイナンス理論の知見があることが重要です。対応実績と交渉力を事前に確認しましょう。
資産税・自社株評価に強い税理士法人か確認。M&Aや法務に対応できる他士業と連携しているかどうかも大切です。
業種や規模に合った買い手ネットワークを持っているかを見極めましょう。成約するまでのスピードもポイントです。