非上場株式を個人間で売却・譲渡する際、上場株式とは異なる特有の法的手続きや税務リスクが存在します。本記事では、個人間の非上場株式売却でよくあるトラブルとその原因、未然に防ぐ対策を解説します。
非上場株式には証券取引所のような公開された市場が存在しないため、日々変動する明確な市場価格(時価)を確認することができません。取引価格は売主と買主の合意によって自由に決定できますが、誰もが納得する客観的な価格が分からないという性質が原因となり、当事者間での不公平感を生んだり、後から税務署より価格の妥当性を厳しく指摘されたりするトラブルに発展しやすくなります。
個人間における非上場株式の譲渡は、親族間や親しい知人、自社の元役員・従業員など、関係性が近い者同士で行われるケースが多く見られます。そのため「身内同士のやり取りだから」と、売買の合意を口約束だけで済ませたり、会社法で定められた形式的な手続きを省略したりしがちです。しかし、関係性の近さに関わらず税法や会社法は厳格に適用されるため、この曖昧さが後の税務調査や親族間の紛争を招く背景となっています。
非上場株式を税務上の適正な時価よりも著しく低い価額(低額譲渡)で売却した場合、売主側に悪気がなくとも、税務署からは時価と実際の取引額との差額分が「買主へ贈与された」とみなされます。この場合、経済的利益を受け取ったと判断された買主(譲受人)側の個人に対して、高額なみなし贈与税が課税されるトラブルが発生します。親族へ安く譲るつもりが、相手に重い税務ペナルティを課してしまう典型例です。
低額譲渡とは反対に、非上場株式を適正な時価よりも著しく高い価格で売却したケースでもトラブルが起こります。時価を超えて支払われた金額は、実質的に譲渡の対価とは認められず、買主から売主への贈与とみなされる可能性が高いです。その結果、売主は株式の譲渡所得税だけでなく、時価を超過した部分に対して贈与税という重い税負担を予期せず課されるリスクがあります。
多くの非上場企業では、経営権の分散を防ぐために定款で株式の譲渡制限を設けています。会社法の規定により、制限がある株式を譲渡する場合は、事前に会社の取締役会または株主総会による譲渡承認を得なければなりません。この手続きを経ずに個人間で売買契約を締結して代金を支払っても、会社に対してその効力を主張できず、株主名簿の書き換え(名義変更)を会社から拒否される手続き上のトラブルが発生します。
税務トラブルを防ぐためには、売買を実行する前に、非上場株式の評価に精通した専門家へ税務上の適正な株価の算定を依頼することが重要です。非上場株式の評価は、会社の規模や資産状況、類似業種比準方式や純資産価額方式など、複雑な計算規則に基づいて算出されます。自己判断による値決めではなく、税務署に対して算定根拠を客観的に説明できる適正価格を事前に把握しておくことが防衛策となります。
法的なトラブルを排除するためには、会社法が定める正しい譲渡承認の手順を徹底する必要があります。具体的には、株主が会社に対して株式譲渡承認請求書を提出し、会社の取締役会(または株主総会)にて承認決議を得て、その決定通知を会社から受け取ります。その後、売買契約の履行と代金決済を行い、最終的に会社へ株主名簿書換請求を共同で提出し、名簿が更新されることで初めて正式な株主の権利が確定します。
当事者同士がどれだけ親しい間柄であっても、譲渡価格、株式数、決済方法、損害賠償、名義変更の時期といった取引条件を明記した株式譲渡契約書を作成し、各自が署名捺印のうえ保管してください。契約書の締結は、後日の権利義務を巡る「言った・言わない」の紛争を未然に防ぐだけでなく、将来的に税務署から税務調査が入った際に、その取引が適正な合意に基づいて行われたことを立証する重要な証拠書類となります。
非上場株式を個人間で売却する手続きには、市場価格の不透明さに起因するみなし贈与税のリスクや、会社法上の譲渡承認手続きなど、個人では対応が難しい専門的な壁が多く存在します。身内だけの取引だからと安易に判断せず、法的な不備や予期せぬ課税ペナルティを未然に回避するためにも、実績の豊富な税理士や弁護士などの専門家に早い段階で相談し、サポートを得ながら手続きを進めましょう。
非上場株式の取引は、上場株と違い法的手続きや税務対応が複雑なため、専門家への相談が不可欠です。
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